こんにちは。施設長の原です。

高齢者の運転問題、深刻になっているようです。私どもも、ご利用者様を送迎していて、高齢者ドライバーをよく見かけます。

私自身、父の運転が不安で、運転免許証を返納するようにずっと薦めておりましたが、ようやく重い腰を上げてもらいました。それでも渋る父を説得するのに5年かかりました。

返納はいつでもできます

運転免許証の返納を渋る高齢者がよく言うのが、「次回の更新時に考える。」というセリフです。
50年以上も運転してきた大ベテランに、「もうアカン。運転はやめろ。」と言っているのです。経験のある方はわかると思いますが、言う方だって心苦しいのです。「次の更新時」なんて言ってると、その時にもう一度、言いにくいことを言わなければなりません。また、ぐずぐずして期限が切れてしまうと、手続きは少し面倒になります。返納は「思い立った時」いつでもできる、という事を覚えておいてください。

ただ「返せ」だけでは、ご本人は不安しかありません

先日、こんなことがありました。
親戚のおじさんで、カニカマが大好きな人がいるんです。気のいい人で、いつもカニカマを買ったときは、「旨いから食え。」と言ってなぜか私や、私の両親にまで大量に買ってきてくれるんです。
それも車で1時間かけて届けてくれるんです。
このおじさんも実は相当な高齢者で、運転は控えるように何年も前から説得していました。
先日もカニカマを車で届けてくれたんで、私の父が「もう運転は本当にやめてくれ。カニカマ一個届けるために運転して、事故起こしたらどうする。」と言ったんです。
しばらくすると、なんとカニカマがわざわざ郵送で届きました。

笑い話で終わらせてはいけません。ここにこの問題の重大なヒントがあります。

私も私の両親も、「運転をやめろ」とかなり厳しく言いましたが、その後のフォローについて何も相談していませんでした。
おじさんにしてみれば、「運転はしたら叱られる。でもカニカマは届けてあげなければ。」という気持ちがあったわけです。
つまり、「運転はやめる。カニカマも届けなくていい。」という新ルールを作っておかないと、本人は不安になるという事を、コロッと忘れたこちらの落ち度です。

その後のフォローについても、話し合ってください。

必ずと言っていいほど言われる言葉が「車が無くなったら不便で困る。生活できない。」だと思います。これは言い訳ではなく、本音です。本人は車が無い生活を想像できず、とにかく不安なんです。
私の場合、幸い免許を持っていない母が元気なので、

(1)2週間に一回以上、必ず実家に顔を出す。

(2)その時に車で買い物に連れて行く。必要な手伝いはする。
(3)兄嫁と連携し、極力同日に行かない。どうせ行くなら日をずらし、効率的にサポートする。

こんな新ルールを作り、車が無くても不便なく生活できるようにこちらがサポートすることを約束しました。

「事故起こしたらどないするんや!」だけでは解決しません

当施設のご利用者様で、不幸にも人身事故を起こし、それがきっかけで車と免許証を息子さんに取り上げられた方がいます。
はねられた女性は軽傷だったそうですが、息子さんはこれ幸いと、「ほら見てみい。取り返しのつかない事故起こす前に返せ!」と免許証を返納させる口実に使ったわけです。
そのご利用者様は、もう何年も前のことなのに、いまだに不服を口にします。「あの歩いとったオバハンが悪いんや。あのオバハンンのせいで、ワシは息子に車を取り上げられた。オバハンさえおらなんだら、ワシはいまでも普通に運転しとる!」ってな感じです。
本人が自分自身の運転能力の低下に全く気づいていないので、免許証を取り上げられたことに納得がいかず、ずっと不満を持ったまま生活しなければならないわけです。これはこれで可哀そうなことですよね。

ご本人に納得していただいて免許証を返納する、という事が理想です。難しいかもしれませんが、ご家族でよく話し合ってください。

大阪府警の、運転免許証返納手続きページのリンクを貼っておきます。
※代理人でも申請できます!